• Kumi Umuyashiki

世代を超えるトラウマ

最終更新: 6月5日

先日「体はトラウマを記憶する」の著者であるDr. Bessel van der Kolkが「世代を超えるトラウマ (EXPLORING INTERGENERATIONAL TRAUMA)」の話をしている動画を見ました。その中で、十代の若いお母さんと赤ちゃんのやりとりを観察する実験の話が出てきます。


(以下、動画から引用します)


Karlen Lyons-Ruthによる調査:十代の若いお母さんと赤ちゃんのやりとりを観察する


調査団がいる前で、若いお母さんは赤ちゃんのいる部屋に入り、遊んでいる赤ちゃんを抱き上げる。見るからにお母さんらしい行動だけれど、よく観察すると、お母さんが赤ちゃんの方へ手を差し伸べた時に、赤ちゃんは少しだけ、お母さんから顔を背けようとする。赤ちゃんはいかにも、「ママ、今遊んでいるんだ、本当は抱っこしたくないのに、調査団の前だから抱っこするんでしょ」とでも言いたげな様子で。


その6ヶ月後、同じ赤ちゃんとお母さんを調査してみると、今回もお母さんは自分は良い母親だということを示すように赤ちゃんを抱っこする。すると赤ちゃんは固まってしまい、お母さんから顔を背けようとする。調査団は1回目の時から何か変化があったことにここで気が付く。


3回目の訪問で、お母さんはまた同じことをする。赤ちゃんはスマイルするが、顔を背け、床に降りてしまった。それでもお母さんは赤ちゃんを抱っこしようとするが、赤ちゃんは、いやいやというように逃げてしまう。赤ちゃんはお母さんの働きかけにまったく応えようとしない。調査団はこれが虐待のきっかけになると判断している。


お母さんにトラウマがあったり、鬱だった場合、赤ちゃんの微妙なシグナルを読み取ることができず、その結果赤ちゃんはお母さんといることに安全を覚えなくなる。お母さんが赤ちゃんに愛情を注ごうとするたびに、赤ちゃんはお母さんを避けようとするようになる。お母さんは自分が最悪な人間だから赤ちゃんに避けられるのだと決めつけてしまう。これが引き金となって、お母さんは赤ちゃんと感情的に繋がることをやめてしまう。そうすることで自分が最悪な人間だと思わずに済むからだ。これがネグレクトや虐待に繋がっていく。

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お母さんが実際にネグレクトや虐待に至る前の段階での、赤ちゃんとのミスコミュニケーションがあるということが、興味深いと思いました。お母さんが赤ちゃんの微妙なシグナルを読み取れないというところ。どうしても実際の虐待という行為に目が行きがちだけれど、お母さんが赤ちゃんと言語以前のコミュニケーション(表情を読み取ったりする)ができないのは、お母さんにも心の傷があるからという観点。


お母さんが子どもと同調(アチューンメント)できない場合、子どもは育ててくれる人から安心を得ることができない、という結構シビアな事実・・・。そしてその結果子どもはお母さんを避けるようになってしまい、お母さんは自分の心の傷でもともと自分に価値を見出せていないから、赤ちゃんに避けられることで自分は価値がないという思い込みを再確認してしまうというところ。


赤ちゃんは、妊娠第三期には感情を感じる脳の部位のひとつである偏桃体が機能していてお母さんと感情レベルで繋がっている。耳は最初に発達する感覚器官のひとつで、お母さんの声のトーンも聞き取っている(声のトーンには感情が表れる)。感情レベルでのコミュニケーションは胎児の頃から始まっている・・・。


子どもの記憶は4~5歳くらいまではストーリー性を持つものではないので、自分が幼い頃に親と上手に調和できていたかどうかなんて、覚えていない。でも、この頃の体験がその子の脳を構築し、その子の一生に影響を及ぼしてしまう。



脳の基本的な構造は、生まれる前から大人になるまで続くプロセスを通して、構築されていきます。幼い頃にどんな経験をしたかが、その子のその後の人生においての学習、健康、行動の基盤が安定したものとなるのか、または壊れやすく不安定なものになるかに影響を与えます。


The basic architecture of the brain is constructed through an ongoing process that begins before birth and continues into adulthood. Early experiences affect the quality of that architecture by establishing either a sturdy or a fragile foundation for all of the learning, health and behavior that follow.(ハーバード大学 Center on the Developing Child より)



子どもは、感情の受け皿がなかった時、内的に縮こまってしまい(inner limitation)、それが発達性トラウマとなる。


大人が子どもの気持ちを読み取れず、感情の受け皿になってあげられないのは、大人の心に傷があるから。


大人が自分の心の傷を癒すことが、トラウマを次の世代へ伝えない唯一の方法なんだろう。大人が自分の問題へ取り組むところから、スタートしたい。問題はないと思っていても、無意識のうちに傷ついて、抑圧したり、切り離したりしてきた気持ちがきっと、誰にだって、あると思うから。


発達性トラウマ
25年前にロンドンで撮影した写真


EXPLORING INTERGENERATIONAL TRAUMA by Dr. Bessel van der Kolk

(抜粋)


At this point in the project, Karlen took some video tapes. I have seen these videos and I found them to be extremely profound. In one of them, the first one I saw, you have this mom, a 14/15 year old girl with a two year old baby and an infant. The kids are playing on the floor. The mom enters the room, she goes over to her kids, eager to show investigators what a good mom she is. She picks up the little kid and it looks pretty good. However, if you look really carefully at this video, you can see something not quite right. As she bends down, the kids move away from her, just a little bit.

As if to say; hey mom, I was playing, I think you’re just trying to show off what a great mom you are, you don’t actually want to pick me up. But you do need to look very carefully to see that.


Six months later the same kid is playing on the floor again and mom comes in. Once again, mom is eager to show what a good mom she is. She picks the baby up and the baby freezes and then moves away from its mom. The investigator can see something has happened between the first and second visit.


On the third visit, six months later; the same thing happens, but this time the baby looks up, the baby smiles but then looks away and falls on the floor. The mom picks the baby up, but the kid very visibly shys away from its mom. It doesn’t respond to her at all. The investigators started to realize that this is how child abuse can start.


When you are a traumatized person, or a depressed person and you don’t quite pick up the subtle signals of your baby, increasingly your baby doesn’t feel safe with you. As time passes, every time you offer affection to your baby, they move away from you. This action reaffirms for you, what a terrible person you are. This trigger prompts you to emotionally divorce yourself from that baby, so as not to feel like such an awful person. Thus begins the child’s neglect and abuse. Does that resonate with you? Does it makes sense to you? Perhaps it happened to you or to people you have worked with?

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