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  • 執筆者の写真Kumi Umuyashiki

ストレスマネージメント(パート1)

更新日:2020年11月24日

"Why Zebras Don't Get Ulcers" という本を読みました。

「どうしてシマウマは胃潰瘍にならないの?」っていうような意味のタイトルです。


このブログに以前も登場した、Robert Sapolsky(神経内分泌学者)が1994年に書いた本です。今から26年も前の本なので、結構昔の本なのですが、ストレスやストレス関連の病について、動物や人間の例をあげながら、興味深く説明してくれている本でした。


本の中には神経系やホルモンの話、免疫の話など、色々複雑なことも書いてあるのですが、そんなに難しくなくって、でもとっても参考になるな~と私が思ったことを、少しここに紹介したいと思います。



心理的・肉体的負荷に対して「ストレス」という名前をつけたハンス・セリエも、ストレスに対して、解消法(スポーツ、趣味など)を見つけることが助けになりますよ、と言っていました。


動物でも人間でも、その解消法として「暴力」に走ることが、しばしばあります。

「壁パンチ」ですっきりするのは、壁が壊れて自分の拳が痛いだけかもしれないけれど、

ストレス解消のために自分より弱い立場のものをいじめることで、自分は胃潰瘍にならなくても、人に胃潰瘍を与えてしまっているかもしれません。(胃潰瘍はストレスで起こる場合が多い)。


ネズミは電気ショックでストレスを与え続けると、他のネズミを噛みつき続けるネズミになります。


雄のヒヒは喧嘩に負けると、自分より弱いヒヒに八つ当たりします。


人として、暴力でストレス解消をしてしまうようなことにはなりたくないですが、人もストレス解消に暴力を選んでしまう可能性があるのであれば、クッションパンチくらいにしておきたいものです。



そういったストレス解消法が効果がある一方、霊長類では、「サポートし合える仲間」がいる場合、状況が変わってくることがあるそうです。


例えば、友達が沢山いて、子どものヒヒと沢山遊び、性行為抜きで雌のヒヒと毛づくろいをしたりするタイプの雄のヒヒは、ストレスホルモンのひとつである糖質コルチコイドの分泌量が、他のそういったことをしない雄ヒヒよりも、少ないのだそうです。


Robert Sapolskyはこれを、「泣くための肩、手をつなぐ相手、話を聞いてくれ、大丈夫だよと言ってくれる人」がいることが、ストレス緩和の助けになる、と表現していました。



心理的ストレスについてですが、動物や人間は、どんな状態に置かれた時に、より多くのストレスを感じるのでしょうか。


ネズミに電気ショックを与える実験の興味深い例が、紹介されていました。


ネズミに電気ショックを与えると、当然ネズミはストレスを受けます。

ストレスを受けたネズミは胃潰瘍になります。


でも、鈴を鳴らしてから、ネズミに電気ショックを与えると、ネズミはストレスを受けていますが、胃潰瘍が少なくなります。


このネズミは、鈴が鳴った→電気ショックが来る!というように、ストレスが来るのを予測できる状態に置かれています。逆にいうと、「鈴が鳴らない時は、安心していられる」のです。


「予測できないこと」というのは、どんなことでもストレスに繋がるようです。

例えば、ネズミにランダムな時間に餌を与えることでも、糖質コルチコイド(ストレスホルモン)の分泌量が上がります。



これに加え、もうひとつ、実験を行いました。

電気ショックが来たら、それを止めるためのレバーを押すように、ネズミをトレーニングします。

ネズミは、電気ショックがきたら、レバーを押せば、ショックを避けられることを学びます。この、自分でどうにかできる(コントロールできる)、という感覚が、ストレスホルモンを下げてくれます。(この実験は人間でも騒音を使って行っていますが、同じ結果が出ています)。



この2つの実験から、「予測できること」と「コントロールできること」で、ストレスは軽減されることが分かりました。


例えば歯医者さんで歯を削られているとき、あの削り音と居心地の悪さの中で、患者が歯科医に「あとどの位で終わりますか?」と聞いたとします。

その時歯科医が、「う~~ん、わかんないな、もうちょっとかな」という回答をするのと、

「あと、2回で終わりです」という回答をするのとで、患者のストレス度合いが結構変わってくるという、おもしろい例え話もあげてくれていました。



ここでこれまでのところを、ちょっとおさらいしてみましょう。


1. ストレス解消法がない

2. サポートし合える仲間がいない

3. 予測できない

4. コントロールできない


ことで、生き物はより大きなストレスを抱えてしまうということが、わかりました。


それに加えて「どんどん悪くなる」という思考回路をしがちな人は、さらにストレスを感じやすいのです。

(これは万人がまったく同じとうわけではなく、人によって違いもありますが、おおむねこういった傾向があるのだそうです)。



生き物に、上記の1~4の状態を与え続けると、この生き物は、鬱になります。

別のネズミの実験では、1~4の状況下でストレスを抱え続けた鬱のネズミは、学ぶことができなくなってしまいました。


1~4を、もう一度読んでみてください。


これらを与え続けられたネズミは「何もすることができない」ということを、学んでしまうのです。


これを英語では、Learned helplessness と言います。

日本語では、「学習性無力感」と言うのだそうです。長期間ストレスにさらされた状態にあると、その状態から逃げようとすることさえも行わなくなる、というのです。


ハッピーなネズミは、電気ショックがある部屋とない部屋に入れると、ない部屋の方へと逃げますが、学習性無力感を持ったネズミは、電気ショックがある部屋にい続けてしまいます。


自分が置かれた状態に対して、「どうすることもできない=コントロールすることができない」ようになると、モチベーションがどんどん下がっていきます。

シンプルなタスクでも「どうせ、無理・・・」となってしまいます。



精神的に健やかである場合、電気ショック(ストレス)があったとしても、「電気ショック(ストレス)がない時も、人生にはある」と考えられるのですが、学習性無力感を持ってしまうと、「自分にできることは、永遠になにひとつない」と考えてしまい、諦めて(give up)しまうのです。



ストレスは、生きている限り避けられないものですが、ストレスが生き物に与える影響を知ることや、わたしたちに何ができるか(あるいは何を避けられるか)を知ることで、もう少し上手にストレスと付き合うことできでしょう。

そして人生で起こってくる様々な困難を乗り越え、乗り越えるごとに、よりたくましくなり、より人の痛みが分かるように、きっと成長していくのです。




<考えてみてください>


◎ あなたのストレス解消法は何ですか?(気分転換になることも、ストレスを緩和してくれます)。

散歩に行ったり、自然鑑賞をしたり、ヨガをしたり、運動をしたり・・・。色々やってみて、気分の変化を観察してみてください。


◎ 友達、家族、恋人・・・。誰といると、楽ですか?

仲間はただつるんでいるというのが、サポートし合える仲間ではありません。自分がそのままの自分でいられる相手は、誰でしょう。そのままの自分でいられないのであれば、それは一人でいるよりももっと孤独かもしれません。楽でいられる相手がいないのであれば、お花でも、ペットでも、仲間になります。夜寝る枕だって、抱きしめたら安心するかもしれません。

安心の感覚を大切に、笑い合える、楽でいられる仲間と過ごす時間を持ちましょう。


◎ 予測できることは、ありますか?

もしも今、ストレスがある状況下にあるのであれば、予測できることがないか、考えてみてください。予測できないことが、どれくらいあるかも、考えてみてください。台風で停電したら、きっと数時間後に電気は戻ると予測できます。病の進行は、予測できないかもしれません。

予測できないことが多いということは、それだけストレスの量も多いのです。もし予測できることがほとんどないのであれば、自分はとても大きなストレスを抱えていると、自分を労わってあげてください。


◎ どうにかできること(コントロールできること)は何ですか?

問題に対して、自分でコントロールできることは、何でしょう?問題が大きいものであっても、自分でどうにかできることを知ることで、ストレスレベルが下がり、希望が持てるでしょう。例えば雨もりはストレスになりますが、バケツを置いたら床は濡れません。


◎ どんな思考をしていますか?

思考を支配することはできません。自由意志とは、存在し兼ねるものかもしれません。物事をマイナスに捉える人、プラスに捉える人。性格は身長と同じで、決意して変えられるものではないですね。でも、苦しいことが起こった時に、「もっと悪くなる」と思ってしまっても、心のちょっとの片隅に、「希望」の場所を作っておいてあげてください。 もしそれよりももう少しできそうならば「きっとだんだん、良くなるよ」と、自分に言ってあげましょう。



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